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木に架かるブランコの理解(AI編)

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「要求」

・ChatGPT、Copilot、geminiに以下の要求でイラストを描いてもらいました。

「木に架かるブランコのイラストを描いて下さい」

図が示す通り、各AIが描いたイラストではブランコの機能としては不十分です。
 理由は以下の通りです。
 ①ロープの長さが同じではなく、安定した揺れにならない
 ②別々の枝や細いにロープが架かっており、人が乗ったときに切れる可能性がある
 ③ベンチの位置が、木の大きさからみると、高い部分にあり子供が自力で座れない。

<<暗黙の要求>>

ほとんどの人はこの要求でイラストを描いたら、無意識のうちにブランコに乗るのは、子供であり、安心して漕げるようなイラストを描くのではないでしょうか。しかし、AIはその前提条件がありません。この暗黙の前提を「要件」として伝える必要があります。

<<不出来の理由をAIに聞いてみた>>

「要求に具体的要件を加味」

下図は、以下の要件を伝え各AIに描いてもらいました。

「木に架かるブランコのイラストを描いて下さい。
ブランコは大抵子供が使いますが、安全であること。
揺らした時に何が別のものに当たらないことが必要です。
また木の枝は十分に乗る人の重さに耐えられる必要があります。
小さい子供が乗りやすい高さにブランコは配置する必要があります。」

子供が安全に乗れる木に架けたブランコ

どうでしょうか、各AIとも要件にあったブランコを描いてくれましたね。

<<できた理由をAIに聞いてみた>>

AI:⇒今回の場合「何を描くか」ではなく「なぜそう描くかが重要になります」
今回のブランコの例では、
子供が使う → サイズ、高さ、安全性を考慮
木の枝が支える → 枝の太さ、ロープの結び方、荷重分散
周囲に障害物がない → 揺れの範囲とクリアランスの確保
こうした条件があることで、ただの「絵」ではなく、使える設計図のようなイラストにできます。

AI:⇒安全性や使い方は明示されないと保証しない
イラスト生成や説明では、指示にない限り「安全な高さ」「強度」「周囲の障害物がない」などは必ずしも反映しません。これは、ユーザーの意図や用途が安全性を重視するのか、単にビジュアルを描きたいのかを確実に判断できないためです。AIは暗黙ルールを固定化していない為、安全性や使用目的は、追加説明を受けて初めて確実に反映します。

<<AIに対する要求と要件>>

私たちは、自らの経験と知識を前提として、暗黙的なルールを前提に「要求」の実現を第三者にリクエストしていることが殆どです。実現しない場合、「常識がない」「経験不足」などの言葉で、正しく「要求」を伝えられなかったことの言い訳をします。
これからAIが益々利用されるようになりますが、「暗黙知」を基本的に持たないエージェントとして活用する必要があります。すなわち過不足なく簡潔に要求を伝える技量が人間に求められます。
最近のAIは会話を記録し、人の傾向をつかまえるようになってきていますが、返答はあくまでも好みと蓄積済み知識から確率的に導かれるものだということを忘れないでください。