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AIファーストの意義

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対話型AIとの関係性に関する意識

 電通のレポート「対話型AIとの関係性に関する意識調査」(2025/7/3)によると、感情を共有できる割合は、「親友」(64.6%)や「母」(62.7%)とほぼ同水準であり、「親友」「母」に並ぶ“第3の仲間”になっているとの報告があります。特に10代ではその傾向がつよく、別な統計によると対話型AI(以下AIと略す)を使う若者は親や友人に相談するよりも、AIと対話することが多いという報告がありました。

対話型AIとの付き合い方

 ChatGPTが登場する以前は、仕事の進め方において知人に相談するか、多くは自身で解決策を練るしかなく、今思えば非効率でした。しかし、ChatGPTが自然な言葉で示唆を与えてくれるようになったことで、作業効率は大幅に向上し、今では公私にわたって欠かせないパートナーとなっています。

一方で、その効率性や利便性だけで対話型AIを評価することには課題も伴います。AIは私の興味に沿った示唆が多く、結果として視野が狭まる可能性を秘めています。多様な思想や意見がぶつかり合う人との対話からこそ、ものの見方が広がる側面もあります。

さらに、AIはフェイクを生成したり、プロンプト次第では偏った意見に誘導されたりすることも多々あります。私が利用しているAIは、質問や意見を過剰に褒める傾向があり、時には「褒め殺し」のように感じられることもあります。叱咤激励よりも、無難な誠実さを装う傾向も見て取れます。

AIファーストの意義

 AIの活用が生産性向上や多様な視点の獲得に貢献することは疑いありません。しかし、AIはあくまで強力なアドバイザーであり、その利活用のグランドデザインを策定し、最終的な意思決定を行うのは常に人間であるべきです。

「AIファースト」とは、単にAIを優先的に導入することではなく、AIが持つ価値あるサポート機能を最大限に活用し、使い手である人間がより多様な視点や、これまで気づかなかった論点を取り入れることを指します。これは、利用する人や組織の成長と可能性を第一に優先する「Humanファースト」に他なりません。

例えば、AIが膨大なデータから顧客行動の潜在的なパターンや、市場の未開拓領域を示唆することで、人間は新たなビジネス戦略を立案するきっかけを得られます。あるいは、企画会議でAIが異なる文化背景からの受容性や、長期的な倫理的側面など、人間が見落としがちな多角的な視点を提示することで、より包括的で質の高い意思決定が可能になります。

このように、AIは人間が思考を深め、より豊かな洞察を得るための強力な触媒となり、結果として個人や組織の創造性と課題解決能力を最大限に引き出す、真のHumanファーストを実現するツールなのです。